変えないものを決める

21世紀の最初の15年余りが過ぎ、日本の人口は毎年20万人のペースで減少し始めました。高齢化が進み、地方の人口流出にも歯止めがかからず、2050年までには6割の地域で人口が半減すると言われる時代。高齢化社会の中で、貴重な労働資源となる「若手」「中堅社員」は当たり前に「共働き」で、「介護問題」も抱えていく可能性があります。

他方、IT技術革新は猛スピードで進んでいます。2050年には1秒で3.5億年分の新聞をダウンロードできるようになるとも言われ、Google技術部門役員によれば「2029年にはロボットは人間より賢くなる」とも。「人でなければできない仕事」の定義は激変していき、「物理的な距離」や「時間の壁」は、もはや大きな制約ではなくなりつつあります。

まさに激動の21世紀。企業にとって必要な組織とは、同じ方向を向いて一糸乱れぬ実行力を持つ組織よりも、変化に機敏に反応し、自ら進化し続ける組織が必要になってくるでしょう。

では、この変化の激しい、難しい時代を生き抜くために、企業経営に必要なものとは一体何なのでしょうか。

先日、そんなことを考えながら200年以上の歴史を持つ大手・中堅企業の事例を紹介した本を読んだのですが、幕末・戦中・戦後という、まさに激動の時代を跨いで存在し続けてきた企業に共通することがあります。

それは「変えることを決めている」というよりも、「決して変えないことを明確に決めている」ということでした。

「決して変えてはいけないもの」を経営者が明確に選択できているということ、そしてそれを「なぜ変えてはいけないのか」、その理由を深く考え続けて、どんな時代であっても色あせない、その企業・組織の根底にある競争優位の源泉を明確に定義できているということなのです。

逆に言えば、それさえ明確に定義できていれば、それ以外の部分についてはその時々の時代に合わせて、柔軟かつスピーディーに革新していくことを迅速に判断できるということでもあります。

時流に対して我々は「変化し続けること」「革新し続けること」が大前提で、当たり前だと思っているこの21世紀だからこそ、経営者は「決して変えてはいけない唯一のもの」を考え抜き、そして定義し、次の世代にバトンを繋いでいく必要があるのだと感じました。