イノベーションは徹底した顧客目線から

先日読んだ雑誌の記事からです。日本ではアメリカに比べて、電子書籍の比率が高まらないそうです。出版社の対応の問題とか、日本人の性格に合わないとか様々な指摘がされています。

ところが面白いデータがありました。日本人のスマホやタブレットの平均視聴時間は160分を越えそうです。もちろんゲームをしている人、SNSをしている人などいろいろでしょう。

一方、本はというと35分ほどのようです。これには、漫画とか雑誌の時間も含まれていてこの時間です。ということはどういうことなのでしょうか。

すなわち、電子書籍を考える場合、紙の本とか、電子の本とか、という議論はあまり意味を持たないのではないでしょうか。すでに、電子媒体に触れている時間帯の方が圧倒的に多くなっているのが現状です。

イノベーションを考えるとき、次代を制覇するものは、別の市場から生まれることが多いといいます。書店にとってamazonは脅威かもしれませんが、その他のニュースキュレーションサイトの方がいきなり脅威になる場合もあるのです。

もはや、かつての護送船団方式の「業界」を意識していることが、企業だけではなく、あらゆる分野の成長を遅らせる要因になっているのかもしれません。

改めて、小山会長が提唱している、「客嗜好」が重要な時代になってきました。1970年代までは「客指向」と書いていました。この時代はまだ、メーカーが売ってやっているという態度で、お客に指を指していた時代です。

そして、1980年代になり、ものあまりの時代になると「客志向」と書きました。顧客は何を好んでいるのかを考えて、商品づくりや品ぞろえをしなければ売れなくなり始めたのです。そこで、「客を見ろ」から「客の立場で考えよ」に変わったという訳です。

それから、今度はバブルもはじけ“モノ余り”はさらに進み、競争は益々激化しました。そこで次は「客思考」という字を当てました。お客が、「この品物はすごくいい!」「この店にいると楽しい!」と思ってもらえるような体験を必死に考え抜き、提供できなければライバルに差別化できないということです。

そして、さらに数年経ち現在では「客嗜好」という字を当てるようになりました。顧客は、もうブランドなどで買うのではなく、真に好むものでなければ買わない時代に入ったからです。猫も杓子も同じようなブランド物を持つ時代は去りました。

このように時代と共に変化してきた消費者マインドですが、その時々の時流に乗りながらも、顧客が何を求めているのかを必死になって考え、試行錯誤しながらニーズに答えていくことが、商売を考えていく上で最も必要な時代になっているのです。