ビジネスにおける「野球」と「ベースボール」の違い①

90年代後半から、日本のプロ野球での一流選手は、アメリカのメジャーリーグMLBで活躍するようになりました。それとともに、日本のプロ野球は、視聴率が下がり、人気が年々減少傾向にあります。

かつて、日本ではゴールデンタイムはジャイアンツ戦の中継がなされていました。まさに国民的スポーツでした。我々世代の子供のころの「巨人」「大鵬」「卵焼き」です。しかし、今やBSでの放送になり、一部の熱狂的なファンだけのマニアスポーツになりつつあります。

その期間、MLBは、どんどん成長しています。日本でもMLBの中継がなされますし、全世界で中継が行われています。アメリカではMLBは、国民的スポーツというより、ワールドスポーツになっているのです。

なぜこんなにも差がついたのでしょうか?2013年、MLBの総収入は80億ドル(8000億円)といわれています。一方日本のプロ野球は1200億円程度です。実に6倍以上の大きな開きがあります。もちろん球団数が2.5倍ありますから、それを勘案しても、1球団あたり収益に2.4倍の開きがあるのです。

しかし、野茂選手が始めてアメリカを渡ったころは、ほとんど差がなかったと言われています。なぜここまで差がついたのでしょうか?

MLBがここまで成長した最大の理由は、「リーグビジネス」というビジネスモデルに大きくシフトしてきたことにあるといわれています。。

現在の日本も20年前のMLBも「チームビジネス」が主流でした。チームビジネスとは、各チームが独自の裁量でやっているビジネスのことを言います。具体的には、チケット収入、スポンサー収入、グッズ収入、スタジアム内での飲食収入、テレビやラジオからの放映権収入などです。

このチームビジネスの場合、スタジアムの集客数と連動します。しかし、たとえば人気球団のジャイアンツでさえ、東京ドームの動員数以上の収入というのは基本的には放映権くらいです。ですからどうしても頭打ちになります。

アメリカでも日本でも人気球団もあれば、そうじゃない球団もあります。MLBの30チームですから「チームビジネス」での収益はざっくり30億ドル程度。ところが、MLBの総収益は80億ドル、この差の50億ドルは「リーグビジネス」で稼いでいるのです。

50億ドルは何かといいますと、それはリーグからの分配金です。リーグビジネスは、文字通りリーグ全体、すなわちMLB全体として展開する事業です。全国ネットや海外の放映権収入、リーグスポンサーからの広告獲得、オンラインでのチケット・グッズ販売などがあります。

リーグからの分配金は、2003年が平均30億ドルでしたが、2009年には40億ドルまで増えました。そして2013年は50億ドルになっているのです。すなわち、MLBをリーグとして、世界中に売りまくって稼ぎまくっているのです。

~続く。