小山会長の教え「将の器」

今日は、小山会長の直接支援の日です。その中で私の心に響いた教えをお伝えしたいと思います。会社経営では、思いもかけない事態に遭遇します。というより経営者たる者は、順調にコトが運ぶほうが珍しいと覚悟しておいた方がよいのかもしれません。窮地に立たされたときにこそ、「将」としての器が試されるという訳です。危機に際し、慌てふためいてピンチを広げるような失態を犯すようでは人の上に立つ資格はないと小山会長は言い切ります。

では、危機に直面したとき、どうしのいでいくか──。

とある小さな製造工場を営んでいた経営者の話を披露していただきました。その社長は、口うるさい社長として社員に煙たがられていました。工具が少しでも汚れていると叱責が飛ぶ、工場にゴミが落ちているとカミナリが落ちるといった具合です。そんなある日、火の不始末から失火し、工場は全焼。その時出張だった社長は慌てて会社に戻りましたが、すでに鎮火したあと。社員たちは呆然とし、泣き崩れている者もいたそうです。誰もが会社は潰れる、そう思っていたと言います。ところが、普段は口うるさい社長が意外にも顔色一つ変えず、穏やかな表情、穏やかな口調で、「そうか、燃えたか……。ところで、誰もケガはなかったか?それならよかった。工場は燃えても社員が無事なら、これぐらいいつでも取り戻せる。気にするな。」と社員に語りかけます。これ以上ないどん底のピンチに悠然と構える社長に、社員たちは頼もしさを感じたそうです。そして誰も会社を去ることなく、会社は見事に再建を遂げたのです。

中国の正史の「魏書」にはこんな一文があるといいます。「怒りて容を変えず、喜びて節を失わず」。怒ったとしても表情に出さず、嬉しいことがあっても節度を失ってはならない。指揮官はどんな状況でも感情を表に出さず、冷静さを失ってはならないと戒めています。後をついていく部下に余計な不安を与えてはいけないという意味も込めれれているのでしょう。

かつて「八甲田山」という映画がありました。旧日本陸軍の実話で、八甲田山での雪中訓練中、遭難した軍隊のリーダーが、「天はわれわれを見捨てたっ!」と悲痛な叫び声を上げたその瞬間、絶望感にとらわれた兵士たちがその場でバタバタと倒れてしまったという話です。経営者とは、どんな難事においても、部下たちを不安に陥れるようなことがあってはならないとの教えでした。

「3.11」のあの震災直後。丸光製麺創業以来の最大のピンチの時、私は当時の社員にどのように映っていたのでしょうか?