中国料理では、不老長寿を目的とした珍香佳味の材料が用いられますが、その中でも最高のご馳走がは「ツバメの巣」で、次が「ふかひれ」だといわれています。中国料理の宴席では本来の主要材料で全体の等級が決まり、「ふかひれ」を用いた魚翅席(ユイチィシー)といえば、一般の人にはとても手の届かない高級料理です。
中国では太古から鯉料理が盛んであり、鯉のヒレの筋をとって料理したものもあり、それは鯉の威勢のよさにあやかり、エネルギー源のヒレを特に取り出して食べていたとの説があります。その後、更なる獰猛なサメのヒレならなおさら元気がつくだろうと、ヒレ自体も大きいのでサメのヒレが使用されるようになったと言われていますが、「ふかひれ」が文献に登場するのは「明」の時代の中期に著された「本草綱目」(1596年)の鮫魚の項に帰されているのが最初だといわれています。
そして、普及したのは「清」の時代になってからで、「清」の「隨園食単」という文献には、古八珍といって古代から珍重した八品目の中に海産物がなく、「清」代に入ってからツバメの巣、海参、翅、鰒魚などの海産物が九品目も登場してきます。
そして、この「ふかひれ」料理を一般的に有名にしたのが、「清」国末期に君臨した、あの悪名高き「西太后」といわれています。彼女は食道楽としても知られ、満漢全席と呼ばれる超豪華な宴会を三日三晩続けたといわれていて、その宴に「ふかひれ」を使用した料理の数々が提供されたことは記録にも残っているほどです。
「ふかひれ」はサメの種類によっても様々ですが、色や形、産地などによっても40種類以上に細かく分類されていて、値段も細かく決まっています。まずは、ヒレの素乾品の魚翅(ユイチー)を色によって「白」と「黒」に大別し、「白」の方を珍重するようです。「白」のヒレは「白魚翅」(パイチー)と呼ばれ、メジロザメ、ツマグロ、ヒラガシラ、シュモクザメ、オナガザメなどが挙げられます。また、「黒」のヒレは「黒魚翅」(ヘイチー)と呼ばれ、ネズミザメ、アオザメ、ヨシキリザメ、ネコザメなどから採れたヒレをいいます。そして、こうして分別されたヒレはそれぞれに種類ごとに名前を付けて区別しますが、最も高価なものは、メジロザメのヒレで、ヨシキリザメの何倍もするといいます。
次にヒレの各部位を分類します。背ビレを「刀」とか「旗」といいます。胸ヒレは「カマ」、尾ビレを「鈎」(カギ)といいますが、一番珍重されるのは、尾ビレです。更に、尾ビレ、背ビレ、胸ビレがセットになっているものが高額な値段で取引されているといいます。しかし、実際は尾ビレはメジロザメで、尾ビレはシュモクザメというように、違った種類をひとまとめにして売買されているのが現状のようです。