魚翅の作り方は、ヒレをサメ肉がつかないように切断して、表面のよごれをきれいな水を使って束子で洗います。骨が付いている方に穴をあけて糸を通して高いところに吊るしたり、ムシロの上に並べて天日乾燥させます。そして、干すこと20日~30日間、生ヒレの重量の40%ぐらいになるまでカチカチに干し、尾ビレ、背ビレ、胸ヒレを1セットに組み合わせて出荷します。高級品になればなるほど、塩味がなく、裁断面もきれいで、十分な乾燥が施されているといいます。
魚翅を料理するには、ぬるま湯に3日間浸し、柔らかくなったところで、外皮をはいで筋のみにして、スープにするなり、姿煮にするなり、味付けの工程に移ります。このように書いてしまうと、至って簡単のようですが、筋だけにするには気が遠くなるほどの手間と時間が掛かるとされています。
そこで、現在ではインスタント的な天日乾燥せずに冷凍させた「冷凍筋糸」が普及しています。しかし、昔ながらの製法でつくられた「ふかひれ」は今でも高値で取引されていて、「准翅」(トイチー)と言われる綺麗に歪みがなく形を整えたヒレが中国では高級贈答品として珍重されています。そして、この准翅も様々種類があり、筋糸が折れずに全部重なっているのが「単准翅」といい、折れてしまったのを修復したのが「爽淳翅」、二枚合わせて付着したのを「双准翅」、折れてクズになったものを集めてつなぎ合わせたものを「月翅」、バラバラに分離してしまったものを「花落翅」(または散翅)を呼び、こちらはお値段もお買い得になっています。
これらを更に大きさや色によって「大単准翅」とか「小月翅」や「半月翅」「金絲」「銀絲」「光翅」などと分類します。しかし、分類はさらに続き、これに産地名を付けて、「広東月翅」とか「台湾月翅」などと分類します。産地で最高級なのは、「呂宋黄翅」といわれています。もちろん実際の売買では見て、触って、臭いを嗅いで金額が決まるようです。
この複雑極まる「ふかひれ」を、今度は様々な味付けで料理していく訳です。一例を挙げますと、「紅焼魚翅」と言われる料理は、醤油で煮込んだ姿煮のことで、「三絲魚翅湯」とは、細く切った筍と鶏肉とハムが入った筋糸上のスープのことです。
このように、中国では大変なご馳走の「ふかひれ」ですが、あまりにも高価なため「斎翅」という代用品まであります。これは豆腐を作る際に表面に凝固した「湯葉」を「ふかひれ」の形に似せた料理のことをいいます。「斎」とは精進の意味もあることから、生臭いものを嫌うお方の精進料理だったのでしょう。
そして、日本にもヒレを使った郷土料理があります。江戸時代に「ふかひれ」などの海産物を中国大陸に唯一輸出していた長崎に「おひれ」という料理があります。この料理は、鯛のヒレや丸餅、蒲鉾、エビ、椎茸、小かぶなどを具材にした澄まし汁のお椀盛り料理ですが、もともとは「フカ」のヒレを使用していたそうです。